本研究は、欧州審議会の子どもの権利に関する準則定立および政策立案活動、特に、96年に閣僚委員会において採択され、現在批准のための署名に公開されている「子どもの権利行使に関する欧州条約」(European Convention on the Exercise of Children's Rights)、および、子ども期政策プロジェクトに焦点を当て、それが、子どもの権利論の原理的新課題にどのように対応するものであるのかを明らかにすることを目的としている。 初年度において、子どもの権利行使に関する欧州条約の仮訳および一応の分析を終え、本年度においては「子ども期政策プロジェクト」に重点を移して研究を行なってきた。 子どもの権利が、子どもに直接する大人との人間的関係においてしか保障されず、国家の果たすべき役割は間接的なものとならざるをえないこと(国家の間接責任制)、そして、子どもの成長発達保障が子どもに直接責任を負う大人によって実現されえないものの、大人と子どもとの関係を規律する原理として、子どもの「意思の尊重」原則が位置づけられざるをえないことが、子どもの権利の新課題として認識されていることを明らかにし得た。そして、そのような原理実現の家族法領域における具体化として、先の「子どもの権利行使に関する欧州条約」が位置づけられ、そこでは、親子関係における子どもの意思の尊重原則の実現を裁判所がチェックする問うことが目的とされていることを明らかにしてきた。 なお本研究では、欧州人権裁判所による子どもの権利に関する判例の研究も予定していたが、まだ分析の途上であり、今後の課題として残されている。
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