・現代フランス大学の大学の管理・運営については、「教授の独立」という、近代大学確立期に獲得された原則が引き続き維持されていることに注目する必要がある。この独立の問題点を解消すべく、組織としての大学の自治=独立に重点を置いた1968年法の制定が為され、かつその独立を実質的に保障すべく1984年法の制定が為されたが、各種資料の分析、聞き取りに依れば、現代においても依然として個人の教授の独立の問題点は払拭し得ていない。また、大学、とりわけその管理運営原則をめぐっては、1968年の「5月革命」以来、多くの政治的対立点を構成してきており、ここに、84年法によって、そうした対立を越えて大学組織の改善を図るべく大学評価が導入されている。本研究では、この点からも分析を行ったが、大学評価機関であるCNEが出した1989年報告書でも、管理・運営組織を各個別大学の戦略のもとに置くべきである等の総括的提言が為されているのみで、現実には84年法の呪縛のもとに各大学の管理・運営は依然として置かれている状況にある。この点に関しても、現行大学評価制度の有効性は疑問である。大学法制理念としての法規定の範囲と各大学の管理・運営組織に対する法の裁量範囲を峻別する必要は明確である。後者についての各大学の裁量範囲の拡大こそが大衆化に応え、かつ科学技術の進歩に対応しうる管理・運営を可能にするものである。このことは、フランスの大学の場合、1968年に公施設法人(etablissement public)という法人格が明確にされ、84年法で財政的独立についての法的整備が為されており、具体的には、同法に依って、大学への財政配分に関して、従来の固定的指標(教員あたり、学生あたり)による配分方法に加えて、国民教育省と各大学の契約(4年間)による予算配分を規定し、かつそれが、当初5%から近年10%までに伸びていることにも応えうる管理・運営方式と捉えられる。
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