本研究は「個性化・多様化時代を迎えた企業が、どのような学歴観を抱きながら人材確保や賃金評価をするのか」ということが分析の中心的テーマであるが、それに先だって、日本全体の学歴に関する意識の動向を押さえるべく、既存のデータの分析・検討を行った。1995年社会階層社会移動調査によると、個人にとって高い学歴を得ることが重要だとする人は、一般に言われているような受験競争の加熱とは裏腹に、10%程度しかおらず、一方学歴をあまり重要ではないと答える人は半数を超えている。しかし実際には、こうした学歴重視度はその人の性別、学歴、到達階層、年齢などに強く規定されていることも明らかにされている。 こうしたことから、企業人の学歴観を分析するにおいても、考慮せねばならない様々な変数の存在が明らかとなり、当初企業のみを対象としたアンケート調査を予定していたが、一部変更して、アンケート対象をある地域の成人に変更した。そうすることによって企業人とそうでない人の学歴に対する見方の比較が可能となり、「社会階層の中における企業人の学歴観」という形でより学問的にも意味のある分析が可能となると思われる。こうした計画の変更により、選挙人名簿を用いた無作為抽出法によるアンケート対象者のサンプリングを行うため、その作業およびアンケートの実施、データ整備に時間がかかった。データ整備は来年度も継続して行い、データ整備の完了を待って分析に取りかかることとなる。 なお、当初、『学校基本調査』、『就業構造基本調査』、『賃金サンセス』等既存の統計データ整備を予定していたが、実際にはかなりの労力を必要とすることがわかり、今回の謝金等では対応できないので、次年度以降必要最低限のデータを整備することとした。 なお、本研究の結果は今後広島大学大学教育研究センターが出版する『高等教育研究叢書』で公開する予定である。
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