戦前日本における小学校長職の地位と役割とを実証的に解明するため、本年度は以下のように研究を展開させた。 まず、小学校長職の地位については雑誌「日本之小学教師」に掲載の普通免許状受領者約2000名分のデータベースを作成した。現在これと並行して作成している優良小学校長の履歴(プロフィール)のデータベースと今後、照合していくための基礎的な作業である。また、府県レベルの校長人事関係の諸規則の整理作業をあわせてすすめている。これらの成果は来年度において校長人事関係の資料集としてまとめる予定である。 次に、小学校長職の役割については佐賀県内5小学校に現存する明治後期の学校日誌の中から校長の職務遂行にかかわる記述を抽出しこれを分析した。その成果は本年度11月に九州教育学会(於:佐賀県女性・生涯学習センター)において発表している。当時の小学校長の職務遂行領域の広がり、「統一」者としての内的事項への関わり、さらには必ずしも評価されてはいないが職務の大きな部分を占めていた数々の出張などについて具体的な事例を挙げながら考察した。詳しくは、平成10年6月に発行される予定の同学会紀要をご覧いただきたい。 さらには、東京の古書店や国立国会図書館、東京大学教育学部附属図書館などにおいて関連文献の収集、複写などをすすめ、来年度(最終年度)に向けての整理作業を行った。
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