フランスにおける学校週4日制の実施は、子どもたちの学習リズムについての研究、とくに、80年代に入ってからその主張が知られるようになった時間心理学や時間生理学と呼ばれる新しい学問の研究成果(年、週、日における学習リズムの変化等)を背景に実施に移されてきた。しかし、時間心理学等の研究者たちは決して週4日制を推進しようとしていたわけではなかった。そして、実際の効果についても、子どもたちの疲労が軽減し、学業成績が向上したと結論づける材料には乏しい。その理由のひとつとして、4日制の学校に通っている子どもたちの保護者の多くがいわゆる専門管理職に就いており、もともと学業成功に有利な階層であることがあげられる。 さらに重要なのは、「リズム」はどの子どもにも観察されるものではないという点である。つまり、学業成績が高い子どもにはリズム性は見られないのである。ここから、リズム研究は、例えば移民の子どもたちに代表されるような、「恵まれない」環境にある者にこそ注目すべきであることが明らかとなる。そして、実際に、90年代半ばからはとくに、地域での活動を学校教育の延長として組織化していく政策(=学校時間再調整政策)へとリズム研究は発展していった。ここでは、もはや4日制は議論の中心ではなくなり、むしろ、5日あるいは6日という中で、いかに地域と協力しながら子どもたちの「生活」時間を豊かに組織していくかが重要課題となっている。これは、今日の日本で必要とされるであろう地域での自主的活動の組織化の問題へとつながっていく課題である。
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