1.本年度は、「学校の自律」論議に関する基本的な文献資料の収集と議論状況の整理を中心課題とした。へッセン州、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州、ブレーメン及びハンブルクなどで「学校の自律」は政策的タイムテーブルに上っているが、特にノルトライン・ヴェストファーレン州文部省におかれた委員会報告書(1995年)がこの問題に関する議論のドイツにおける共通理解を形成していることを明らかにした。その上でこの大部な報告書の内容の整理と分析を行い、「学校の自律」化を進めるために必要な政策課題の理解に努めた。なおこの成果の一部を日本教育学会大会(1997年8月、日本大学、自由研究発表)で報告した。 2.「学校の自律」の具体的な動向についての事例研究について、ドイツの研究書及び教育雑誌によって理解を深めた。また特に中等学校段階での各学校の特色ないし独自性が現代ドイツで現実に持っている意味を知るために、インターネットを利用してドイツの中等学校生徒及び教員に対して小規模なアンケート調査を行った。この結果に基づいて、1998年秋刊行予定の単行本に寄稿した(入稿済み)。ドイツでもいわゆる高学歴指向が強まり、各学校の特色は親・生徒の学校選択にとって意味を持たなくなっているという側面、地理的な近さや親戚・兄弟の経験といった伝統的要困が学校の評価の決め手となっているという側面、学校独自の教育的特徴が重視される側面の三要因が現代ドイツの学校選択行動の枠組みであるというのがその結論の要旨である。 98年度は、以上の研究の延長上に、学校・教育行政サイドからの「学校の自律」化の論理と教育サービスの受け手である親・生徒サイドからのより良い教育への要求の制度化の論理との関係を追究する予定である。
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