我が国の戦後公教育は、教育基本法が提示した平和で民主的な社会の構成員を養成するという存在意義が大きく後退し、代わって経済発展に貢献しうる知識偏重のものになってきたのではないかという問題意識から出発した。この公教育の存在意義に関する揺らぎが、学校教育等に機能不全をもたらし、いじめ・不登校、厳しすぎる校則といった様々な病理的現象を産み出している。 本年度は、現在の公教育制度の存在意義を教育学と憲法学の統合的視点から問い直すと共に、併せて、公教育、特に学校教育の現場にたずさわる教員の公教育に対する意識を明らかにするべく基礎的な研究を行った。 公教育制度を理念として捉えるだけではなく、現実の運用、特に学校教育の現場にたずさわる教員の視点からも眺めることによって、現在のところ必ずしも対策が十分に講じられているとは言えない、いじめ・不登校・体罰・校則問題といった様々な病理、言い換えるならば公教育制度の機能不全に対して、現実的で効果的な対策を講じる可能性を次年度に検討したい。
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