今年度は、アメリカの19世紀の女性たちの生活そのもの、およびそれらをめぐる心性をさぐる手段として、基礎資料の収集、整理、翻訳等の作業を中心に、研究を進めた。主として、注目しているのは、 1.19世紀の社会奉仕活動(教会活動)の記録なかにみられる女性たちの言動。 2.19世紀に出版された「子ども」および「子育て」をめぐる雑誌等にみられる言説 3.専門職に就いた女性たちの個人史等の資料である。 1については、宗派によって、多少の違いはあるものの、女性たち自身が記録したもの、発言の記録、あるいは、男性牧師によって、女性たちを対象に語られた説教等の記録をみることができ、19世紀の女性の位置づけをよみとる一助となる。2については、この時代に女性を読者として多量に出版された雑誌の共通項、およびそれらの影響から、「子育て」をめぐる言説の構造をみることができる。しかし、これらの著者が男性であるのか、女性であるのかの相違等について、さらに検討していく必要がある。3については、この時代の女性たちがおかれた共通の基盤をみる上での示唆を与えると思われるため、現在分析をすすめているところである。 次年度は、これらの資料をまとめながら、特に「保育者」という専門職が誕生していく構造をこの時代におかれた女性の位置づけと関連づけらがら、分析を進めたい。
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