本研究では、平成8年度から、育児・子育ての社会的基盤形成の方向性を探るべく、戦前期(1920-40年代)の農出漁村で組織・運営された季節託児所(農繁期託児所)の発展経緯と実態解明を中心に、地域の子育て土壌の掘り起こし作業に取り組んできた。本テーマは、先行研究が乏しい一方で、多分野の近接領域を網羅する必要があり、また散逸する史料の発掘を含むため、多大な基礎作業を要するものである。 平成10年度は、主に3ヶ年の史料収集の成果の取りまとめを行った。具体的作業内容は以下の通りである。1 先行研究や文献調査で得られた一次・二次史料等を手がかりに、論文1を執筆した。目次構成は、はじめに一問題の所在、1季節託児所とは何か、2戦前・戦後の一季節託児所をめぐる全国的動向と政策展開(1)昭和初期にいたる動向、(2)「季節保育諸施設標準」(1935年)にみる季節託児所像、(3)日中戦争以後の季節託児所政策の展開、(4)戦後の季節託児所の位置づけと発展、3戦前の新潟県における社会事業と季節託児所の実際(1)季節託児所の発展前史、(2)季節託児所の設立、(3)「農村更正事業」「戦時厚生事業」としての季節託児所の発展、(4)戦時期の新潟県における季節託児所保育の実際、小括に代えて、である。 2 国立国会図書館および新潟県立図書館で、全国の都道府県・市史および新潟県内の市町村史に掲載された季節託児所の設立・発展に関わる記述の検索・複写作業を行った。また、国会図書館所蔵の一次史料(半官半民の中央社会事業協会や愛国婦人会、産業組合中央会などの諸団体による季節託児所の手引き書)、県立図書館所蔵の『新潟県(越佐)社会事業』(新潟県社会課)における関連記事の閲覧・複写を行った。これらは目次一覧を作成し、平成11年3月現在準備中の研究成果中間報告書(本編・史料編)に所収の予定。 3 2の成果から、戦前・戦後の新潟県内の季節託児所一覧を作成中である。(前記中間報告書に掲載予定)。 4 研究費で購入した『社会事業雑誌目次総覧』『社会事業史料集成』『育児雑誌』等の関連記事や『実践季節保育所』等の文献、複写史料などを検討・分析中である。
|