1. 本年度の研究成果としては、次の諸点を確認した(本テーマに関する学会発表を行い、論文をまとめた)。 (1) 全米教職基準委員会(NBPTS:National Board for Professional Teaching Standards)による教職の上級資格設定は、他の諸組織と協力しながら教職の基準を策定するもので、教育の成果を向上させるための重要な政策として位置づけられている。 (2) 上級資格の設定をめぐっては議論が登場した。委員会による資格設定の問題点としては、次のような点が指摘されている。いずれも、資格の本質的な部分にかかわる重要な問題である。 ・基準はあいまいな文言で示されており、客観的な評価につながるかどうかは疑問である。 ・資格設定に使われた連邦予算は莫大であり、対費用効果は非常に低いものにとどまっている。 ・教員評価の指標をつくるためには、優秀な教員の職務を分析することが前提となるが、このときサンプルとなる優秀な教員は学区から選出される。すなわち、全国資格の設定がなくても優秀な教員を選ぶことは可能である。 ・今後、多くの教員が上級資格を取得するようになると、資格のレベルが保持できない。 (3) 資格設定に関する主張には、真っ向から対立するものがある。例えば、基準のあいまいな文言について、上のように批判がある一方で、運用過程を重視するところに積極的な意義を見出す主張がある。それらの可否については、まだはっきりとはしておらず、今後の資格の行方は注目に値する。 2. 残された課題としては、(1)日本で急速に進行している教員免許制度改革との比較考察、(2)資格をめぐる論争点についての継続的なフォロー、の2点をあげておきたい。
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