滋賀県大津市堅田および鹿児島県熊毛郡南種子町に調査地を定め、民俗学的な聞き取り調査および参与調査を行った。聞き取り調査は、昭和初期に時間軸を設定して、まず第一に、水田稲作を中心とした生活のあり方全般を民族誌的調査により復元し、その上で、水田を舞台とした鳥猟の技術について、稲作との関係に注目しながら調査した。また、そうした現地調査に並行して、現在までに日本各地から報告されている調査報告書や民族誌および農書や農業日誌の中から水田を舞台とした鳥猟に関する記事を収集した。 その結果、稲作民は水田を含む水辺の環境およびそこに棲息する水鳥などの動植物について豊富な民族知識を有し、そうした知識を基盤にして、手網や鳥もちといった民族技術を駆使して水鳥猟を行っていたことがわかった。そうした伝統的な水鳥猟をめぐる民族技術は、素朴ではあるが銃猟のように時間や資本を必要としないことに大きな特徴がある。
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