本年度は、文献・資料収集につとめるとともに、奈良国立文化財研究所に二度出張し、「二条大路木簡」中の食料品荷札の調査を行い、一定の成果を得た。また現在、荷札の焼付写真を整理中であり、今後詳細な観察・分析によって、論をより具体的に展開していけるものと思う。荷札の作成手続きおよび徴税過程については今泉隆雄(1978)の先駆的な研究以来諸氏の論があるが、実態はかなり複雑かつ多様であり、単純な類型で律することはできない。また、郡より下級の段階(郷・里)の果たす機能がたいへん大きいことも、再確認された。従来多くの研究者が抱いてきた“郡(司)万能主義"では地方支配の実態は全く解明できないことを痛感している。国-郡-郷(里)という各級機関のそれぞれの具体的機能の解明と相互連関、地方支配の構造的解明にむけて、じっくりと作業・考察をすすめていきたい。
|