本年度は、国内史料については、幕府及び尾張藩、津山藩、古河藩、南部藩などを中心に調査を行い、海外史料については、特にイギリスのアジアにおける実際の動向を知るためにイギリス外務省文書の収集・調査を行った。その結果、新たな知見として得られた点は以下の通りである。 1.海外情報について関心を持ち、幕府からの公式的な通達以外に積極的に情報の収集を得ることに努力している藩とそうでない藩とが存在した。その藩の違いは、海防強化を積極的に行うか否かという違いをうみだした。 2.江戸に駐在する藩士が、藩主の命を受け海外情報の収集活動を行っており、他藩の藩士などから情報を入手している実態も明らかになった。 3.ペリ-来航に際しては、幕府からの情報を得るだけにとどまらず、諸藩が独自の探索を行った。その際、文字による報告書以外に、黒船などの絵図も一緒に制作した。民間へ流布するもととなった。 4.ペリ-来航という一大事件について危機意識を増大させ、尾張藩・水戸藩・藤堂藩・宇和島藩・津島藩との連携が成り立っていることも判明した。 次年度は、中国付近におけるイギリス勢力の実際の動向とそれに対する幕府・諸藩の反応を明らかにしていきたい。
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