今年度の主要な作業は資料の収集と分析にある。まず、資料の収集については、研究対象である中国古代、殷周時代青銅器に関する資料を網羅的に集める作業を中心として行った。それは、東京大学東洋文化研究所及び文学部の所有する漢籍を中心に、さらに欧米の博物館などの刊行著録を加え、複写(写真撮影を含む)を行った。また、殷周青銅器は、近年も続々と発掘され、その報告書が公刊されており、現在入手が難しいものについても、複写(写真撮影を含む)を行った。さらに、それらに関する論文も続々と発表されているが、稀覯雑誌も多く、幸い東京大学にはそれらが多く所蔵されているので、可能な限り複写を行った。 次に、収集した資料の分析については、今回の対象である洛陽(成周)から出土した青銅器(宗廟で用いるいわゆる彝器を中心とする。武器は別扱い)を中心として、検討を加えた。洛陽出土青銅器には、正式な考古学的発掘による新出器と、正式な発掘によらない伝世品とがある。前者については確実なものとして考察の中心に据え、後者については「洛陽出土」というその情報そのものの検討から始めた。その結果、従来の研究のもつさまざまな誤り・不備が明らかとなり、根本的な考え直しが必要であることを痛感、改めての検討作業に入っている。 おおよそ、このような二本の柱を以て研究を行い、いずれについても、相当の成果を得、また今後の研究の基礎・予備作業ができあがった、と言い得る。
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