本研究は、朝鮮王朝時代の漕運制および船運業史研究に関して、今後の本格的研究のために史料の収集・分析を行うことを目的とする。本年度はその1年めに該当し、おおむね以下のような活動を行った。 (1)『朝鮮王朝実録』CD-ROMを活用して同史料の関連記事を検索し、これをもとに漕運関係年表の作成に着手した。この作業は現在、『成宗実録』段階までの記事原文のカード化が完了している。次年度にも引き続きカード化を進め、年表へとまとめていく予定である。 (2)国内外諸機関所蔵の関係史料の目録化を、韓国のソウル大学所蔵のものを中心に進めた。また国内所蔵史料の実地調査として、京都大学に出張し、同大図書館所蔵の『嶺常日記』を調査して複写した。 (3)これらの基礎的作業と並行して、本研究の課題に沿って次のような研究成果をあげた。 (1)朝鮮王朝時代の水運史研究における、最近の重要な成果である崔完基著『朝鮮後期船運業史研究』(一潮閣、ソウル、1989年)の書評を『朝鮮学報』164(朝鮮学会、1997)に発表した。 (2)朝鮮王朝時代の船舶所有者の具体的な海上活動の実態把握のため、『済州啓録』(原書はソウル大学所蔵)所載の海難関係記事の分析を試み、その成果を九州史学会平成9年度大会で「19世紀済州島民の海難と漂流」と題して報告した。なお、その内容は近日中に論文として発表予定である。
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