1.中国系要素をもつ朝鮮三韓時代の墳墓について、埋葬主体部の形態、出土遺物の概要、およびそれらの画像データを含めた詳細なデータベースを作成した。 2.1のデータベースを時期別・地域別に類型化し、分析した結果、三韓の上位階層が当時の先進文化である中国の漢文化を積極的に導入し、それらを様々な形に変容させながら活用していたという状況を明らかにすることができた。また、この変容過程が朝鮮の国家形成に大きく影響していたという見通しを得ることができた。 3.このような朝鮮半島における漢文化導入の窓口的役割を果たしていた楽浪郡の古墳についても、現在、同様なデータベースを作成中である。 4.3のデータベースを作成する過程で、楽浪古墳の埋葬プロセスについて、その特異性を抽出できた。とくに、楽浪の3世紀代の横口式木槨墓である南井里116号墳の場合は、初葬時に内槨なしで埋葬を行っていたものが、第2次埋葬の際に新たに内槨が設置されるとともに、墳丘が築造され、さらに第3次埋葬の際にはその内槨と外槨の一部を改造して埋葬を行っていたという新事実を明らかにできた。このような埋葬主体部の改造行為は中国の漢墓にはみられないことから、漢の郡県でありながらも、漢文化とは異なる楽浪郡文化の独自性を示す重要な要素であると考えられる。今後は関連資料との比較を通して、このような埋葬行為が生じた背景について検討を進めていく予定である。 5.2と4の内容については、先行研究を整理した上で、早い時期に論文として発表する予定である。
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