本研究は、いかにして土器に内在する情報を分析に耐えるものとして資料化するかを課題とし、その実現と資料の収集によって、土器製作時の属性を考古学的解釈へ結びつける方法を確立することを目的とする。このために今年度は、近接撮影写真による資料の収集とレプリカ法による資料化技術の確立を基礎的な作業として行った。 近接撮影は、マイクロレンズとマクロスピードライトの購入によって、35mmフィルムによる実物と1:1縮尺の撮影が可能になり、さらにフイルムスキャナによってフイルム画像を取り込むことによって、画像資料の管理効率が飛躍的に増した。主に、静岡県内および神奈川県内の資料を撮影収集したが、特に弥生土器の縄文施文原体の属性について新知見を得ることが出来た。また、レプリカ法については、歯科用に用いられるアルギン酸塩印象材およびビニルシリコーン印象材を使用して、本学で所蔵する考古資料の型取り実験を繰り返し行ったほか、切断法を用いる際の各印象材の特性などについて実験を行った。これにより、それぞれの印象材の凝固時間や剥離技術についての経験的データや技術を得て、この方法で、各地の考古資料の属性を資料化していく目処が立った。今後は、レプリカ法と写真技術を組み合わせた資料化の方法をさらに確立させていくとともに、顕微鏡を用いた撮影によって、新たな資料化の領域を模索する予定である。 本年度の本研究の過程で知り得た知見の一部は、本学人文学部紀要にその一部を掲載したが、本年度の研究の重点は技術の確立と資料の収集にあったため、考古学的な解釈に関わる成果は多くない。来年度はこうした目標に接近するために、解釈や理論の問題についても研究考察していきたい。
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