本年度は、以下のように研究を進めた。 まず第一に、古墳時代中期・後期の資料収集とデータベース化を行い類型化の作業を実施した。これによって古墳時代全体を通時的に見通し、前期の特色を抽出することができ、また各地の動態を知ることができた。第二に畿内大形前方後円墳の築造企画と地方古墳とのそれに対する有機的関連性について検討を加えた。その結果、必ずしも全ての前方後円墳が畿内大形前方後円墳と築造企画を共有しているのではなく、類型に漏れるものの存在が明確になった。これらの前方後円墳を理解するためにモデル地域として抽出し、岡山県美作地域をフィールドとして一定エリア内での事例研究を行う中で解釈の糸口を探ることにし、同県真庭郡落合町川東車塚古墳の発掘調査を実施した。また、調査中、隣接する久米郡久米町の奥の前1号墳において過去に出土した遺物を追跡調査し、国内三例目の竪矧板皮綴短甲を地元で発見し、調査研究のために借用した。第三にこれまで実施してきた研究成果を東北・関東前方後円墳研究会(1999年2月6・7日、於群馬大学教育学部)にて「前方後円墳築造企画の型式学的研究ー類型的研究法によるー」と題して口頭発表し、関連する研究論文の作成等、本研究課題のまとめを行うための準備に入った。
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