研究概要 |
1.研究実施計画で企画した様に忍路子型細石刃核・広郷型細石刃核を保有する石器群を全道各地の資料から抽出し,データベース化の作業を行なった。特に細石刃核と有舌尖頭器の共伴関係に留意した。また使用石材と石材産地の距離についてのデータは,該期集団の年間周回領域や集団間の石材交換ネットワークについて考察する上で有益な情報となった。携行石器と遊動圏,管理的石器と便宜的石器,長距離移動に最適化した石器組成,植刃器と有舌尖頭器の補完的または重層的関係と石材環境について,上記データベースを活用して考察を進めた。 2.本州東北部での神子柴・長者久保文化の石器群のデータベースを作成した。北海道に最も近い青森県域で該期資料が少なく,道内資料と直接に対比できる遺跡を求めることは難しかった。しかし道内の該期石器群と共通する要素として大形の石斧や局部磨製石斧があり,本州の神子柴・長者久保文化と北海道の細石刃文化との対比に用いることができそうである。 3.北海道の該期遺跡の黒曜石の原産地分析については,学外機関へ委託したが分析結果は出揃っていない。石材消費地である旭川市や千歳市の該期資料の石材産地は重要な問題を含んでいる。肉眼での観察によると,該期の石刃に置戸産黒曜石を用いたと考えられるものが多く,広郷型細石刃核の常呂川流域での多出傾向と併せ,黒曜石産地と特定の細石刃技法の結びつきが想定できそうである。
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