小地名の大規模な資料として、財団法人国土地理協会が発行する『国土行政区画総覧』1995.08現在号(約4千ページ)を基礎資料とし、そこに記された小字・通称地名のうち、国語資料としての価値が高いと考えられるものについて、文字列と読みと所在を入力した。そこに現れなかった微細地名・消滅地名における用例を補うために、『国土行政区画総覧』初号(約3千ページ)『国土行政区画総覧』除去号(276ヵ月分)(約3万3千ページ)、『角川日本地名大辞典』全50巻所載「小字一覧」(約300万件)などを補助資料とし、そこに見られる小地名使用漢字の全数を調査の上、基礎資料に出現しなかった用例を引き出し、同様に入力した。『国土行政区画総覧』のチェックは継続中である。『角川日本地名大辞典』の小字からの入力は、8割程度進捗した。「全国町・字ファイル」(同協会・地方自治情報センター)(約46万件)は適宜参照した。 これと並行して、関連資料の購入を始め、その内容について分類・整理を行った。この結果、地名特有の字や音訓かと思われていたものでも、実際には歴史的な資料などにすでに存在していたという例が、いくつか確認されつつある。 これらの調査研究について複数の中間報告を行っている。一つは、「アゼ」の方言形の分布と、「畦」「畔」の地名訓の分布とを取り上げて調査を行い、国立国語研究所の文字・表記研究会で成果を発表した。その内容は、方言形と地名訓とを比較検討した結果、方言資料では覆えなかったり、さかのぼることができない方言形の分布や方言訓が多数確認された。この結果は、一例に過ぎず、さらに調査を継続している。また、論文として、「艝」(そり)「轌」(そり)「鱈」など「雪」を含む地名国字の歴史と分布、「萢」(やち)「葛」など『朝日新聞』に現れた地名とその字体、頻度や、「蠣」(かき)「礪」(と)「辻」「鈬」(ぬで)「粐」(ぬか)など地名に使われる字の字体に対する選択行動について、発表を行った。
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