以下の4点について研究成果を報告する。 ○藩版の書誌調査 新発田市立図書館への調査を経て、概ね藩版の書誌データを収集した。目録作成まで八割方が揃ったと言える。また、他の図書館、文庫での調査によって、新発田市図蔵本よりも善本の新発田藩版を幾つか発見出来た。 ○町版との比較 町版からの被せ彫りの調査もほぼ終えた。ただし、新発田以外にしかない孤本などで藩版か否か判定に迷うもの、版面の劣化等により異版識別自体に迷うもの、等が残る。基礎となる、町版自体の被せ彫りも予想外に複雑で難渋した。 ○版木調査への準備 新発田市内の宝光寺に遺蔵された版木は、新発田市教育委員会の管理下に置かれることが決った。教育委員会職員の方々にも、文化財保護の予算獲得のためにも、今後とも藩版版木の重要性について強く言及してほしいと言われた。平成十年度中に調査に入る予定で、内諾も得ている。 ○まとめ 藩版等官営・藩営の出版は町版と異なり、刊記を持たぬことをその典型的特徴とする。そのため出版事情が殆ど不明である。今回は他の図書館等の調査を平行しておこなったおかげで、新発田藩版の出版に関わる新資料も発見出し、書誌調査のみならず具体的な出版事情の解明も可能になった。 論文は鋭意準備中であり、ある程度まとまった成果を期待されたい。
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