二年計画で、越後国新発田藩の藩版書を調査してきた。これ以前には不確かな分類によってタイトルと冊数を示す程度の研究しか無かったが、本研究により出版書のタイトル、冊数が確定し、各々の書についても書誌学的調査、版木調査を経て、その内実が詳しく判明した。 新発田藩版には、町版(商業出版)からの覆刻出版という特徴がある。二の特徴は、本研究が初めて明らかにしたもので、書誌学的調査は、この全容を知るために必須なものであった。 版木調査も本研究の優れた点で有り、出版書のみでは分からなかった、彫板の過程などを明らかにしえた。なお、版木は1138枚にのぼったが、散佚しているものも多くあった。 藩版書は、町版と違い刊記を持たないものが多い。先の版木調査と合せて、『新発田侯開板評議』という新資料を発見し、いままで不明であった藩版書の刊行年などが、かなり分かった。 関連的に、町版に於ける崎門朱子学の経書の板株(出版権)の移動についても、明らかにした。
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