平成9年度の研究実績は、以下のごとくである。 1、<和製類書>の範囲の認定-書目年表作製のための基礎作業- 機軸になる故事要言集に関しては、目安が付いていた。今年度は、「随筆」「絵本」とされてきたもののどこまでを<和製類書>と認定できるのかの共通認識を高める努力をした。具体的には、「近松と『愈愚随筆』」(「近世文芸」六七号 平成10年1月)、「近松と『絵本宝鑑』」(「日本文学」一九九七年一二月号)を公表した。(なお、これらは、平成8年度奨励研究からの継続であったので、一応平成8年度の成果とした)。 平成九年度新たに判明してきた事実として、禅宗関係の『句双紙』が和製類書として認定できるだけの内容を持つことがわかった。基本方針としてこれらの書も和製類書に含めて考えたい。 2、<和製類書>受容の具体的事例の指摘 研究の有益性を示さなければ、なかなか研究は進展しにくい。したがって、<和製類書>受容の具体例を示すことで、研究の必要性をアピールする。具体的には、「羅山編『童鑑鈔』の初版」(「近世文芸俯瞰」平成九年五月 汲古書院)を示した。(なお、これも継続性を勘案し昨年度の研究成果とした)。 今年度新たに問題としたい『句双紙』については、月尋堂の浮世草子との関連を平成10年度中に発表するつもりである。 今後の研究の展開において、最も必要なことは和製類書を影印・翻刻し多数の人間に実見してもらうことであると考えるようになってきた。そこで、代表的な和製類書『訓蒙故事要言』を影印・翻刻できないか、出版社との交渉を平成十年度前半に始める予定でいる。これにより、和製類書への注目を一層高められるのではないか。
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