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1998 年度 実績報告書

世紀転換期のアメリカ文化諸相における優生学パラダイムの浸透に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 09710332
研究機関東京大学

研究代表者

庄司 宏子  東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (50272472)

キーワードユートピア / 優生学 / ジェンダー論 / ポストコロニアル / 大衆文学・文化 / アメリカ文学
研究概要

本研究は、19世紀末から20世紀初頭のアメリカにおいて疑似科学としての優生学が性差や人種の差異の構築の背景となったことを、差異が表象される場としてのユートピア小説に着目しながら、優生学的言説の社会、文化への影響と浸透を明らかにすることを目指した。ユートピア小説はこの時期に量産された文学ジャンルであるが、ユートピアとは一般に考えられているように非歴史性、普遍性に根源的な価値を体現するものではなく、それが属する歴史、社会、文化の限定を強く受けるものである。特にこの時期に描かれたユートピア小説は人種、階級、性差等の差異を未来に向けて意味づけるメッセージ性を帯びていることが特徴である。本研究では、従来カノン対周縁と見なされてきた男性作家のユートピアと女性作家のユートピアとの関係を捉えなおし、両者の類似性、対比性を読み解くことに主眼をおいた。その結果、両者の共通点として国家の帝国主義的な地勢観の浸透が見られること、対比点として女性のユートピアでは帝国主義のイデオロギーのもとで形成される人種観が性差観へと置換されており、その根拠として優生学の言説が利用されていることがわかった。特に後者の論点が得られたことは、時代の性差観とは単独で形成されるものではなく、人種や階級、セクシュアリティー等のカテゴリーとの相互関連の中から生まれるものであるという今日的なジェンダー論の考え方を証明するものとなった。また帝国主義との関連は、ポストコロニアル的観点からユートピア小説を読み直す上で貴重な視点をもたらすこととなった。今後は、ここで得られた論点をさらに広く同時代の他の文化テクスト(ユートピア小説以外の文学ジャンル、SF、冒険小説、旅行記その他)の中に補強していくことを目指したい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (1件)

  • [文献書誌] 庄司宏子(共著): "世紀末アメリカの「北極」をめぐる言説-帝国主義・性差・ユートピア『言語科学と言語態』所収" 東京大学出版会, (1999)

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公開日: 1999-12-11   更新日: 2016-04-21  

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