申請者(南)は、2年間の研究費交付期間に、これまでの17世紀後半演劇研究が見過ご インターレグナム してきた王位空位期間の演劇の影響を、主に喜劇における他人を中傷誹謗する際の性的な比喩を含む言語表現と都市の表象を中心に考察し、1660年代から70年代の演劇が持つ広い意味での政治性が1690年代になり演劇の質とともにどのように変容していったかを、ここの作品の細かな分析を通して明らかにしようと考えた。またその際、実際の上演がどのように行なわれ、またどのように受容されたかということが、戯曲の分析とともに重要な意味を持つことを改めて示そうと考えた。 初年度にあたる平成9年度は、Derek Hughesが English Drama 1660-1700で採用した時代区分を基に1660年から1700年までの演劇作品を5つの時代区分に分け、とくにその初期の演劇のあり方について考察しようと試みた。これは、研究対象を絞り込む方が、いわゆる王政復古期全体に目をやるよりも申請者の意図する問題をより明確化できると考えたためである。そのために申請者は、王政復古直後の劇場における演劇活動の再開にともない頻繁に上演されたBeaumont and Fletcherの作品に注目した。ジェイムズ朝からチャールズ朝にかけて人気を博したこの二人による作品が、インターレグンナムを経たいわゆるCaroloan dramaとしてどのように舞台で再演されたのか。これらの作品がどのように改変されたのかということに注目することにより、清教徒革命以前と以後のイギリス演劇の性質の違いを明確化し、その中からインターレグナムの影響と考えられるものを、主に作品の精読とテキストの分析から導き出そうとした。
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