今年度(1997年度)の研究成果としては、まず、アメリカ小説の主流のジャンルであるロマンスと初期大衆消費社会とのつながりを、19世紀アメリカの小説家ヘンリー・ジェイムズの作品The Americanの分析を通して考察し、この研究は、アメリカのジャーナルPapers on Language and Literature(南イリノイ大学から発行)に発表した。その後、19世紀アメリカ文学と同時代の大衆消費社余とのつながりを引き続き研究しながら、更に、現在最も注目されている最新のトピックの一つ「人種」をからませて、この分野の資料や研究書、批評理論を精読し、研究の探化と先鋭化をはかった。具体的には、ヘンリー・ジェイムズの小説What Maisle Knewに登場する茶褐色の女性に注目して、その分析を通して、19世紀末の西欧社会が抱えていた矛盾、即ち人種差別主義と消費社会ならではの金銭史上主義という価値観との相克を考察した。この研究は、1997年10月慶應義塾大学で開催された日本アメリカ文学会全国大会で口頭発表し、臨川書店から発行されている『英文学春秋』の1998年春号(4月)に掲載予定である。両研究とも、テクストの精密な読みは“Superb"であり、また文化的社会的背景についての説明は“Sound"、更にテクストの緻密な読みと文化的社会的背景についての説明の組み合わせは“Very effective"であるとの評価を得ている。
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