本研究、20世紀初頭のアメリカ先住民女性作家モ-ニングド-ブの言説とその時代のアメリカ文化を多文化主義視点から究明しようとするものである。本年度は、日本で可能な限りの先行研究や関連二次資料の収集を行う一方、米国へ赴き米国公文書館とシカゴのNewberry Libraryにおいて20世紀当時の対先住民政策に関する古文書を収集した。その際、先住民関係資料に詳しい当地の司書や、Newberry Library D'Arcy McNickle Center for the History of the American Indianの現主任で先住民の歴史研究者でも著名なFrederick E.Hoxie氏と会見氏、様々な示唆を得た。その後、先住民関係の資料の充実しているカリフォルニア大学のBancroft Libraryの特別資料室でも主にアメリカ西部の先住民文化に関する重要文献の収集をした。米国公文書館では、当時の白人文化に対するモ-ニングド-ブの基本的な態度を示す言説を含む土地売買に関する際の調書が得られ、Newberry Libraryでは、19世紀中期から20世紀初頭に至るモ-ニングド-ブの作家活動期の対先住民教育や同化促進派の白人の組織活動の状況を知る手がかりとなる様々な資料を探すことができた。現時点では、これらの資料購読をもとに、モ-ニングド-ブの小説の時代背景、思想、そしてアメリカ社会への姿勢を分析し、少数派の社会的他者としてのアメリカ先住民女性作家であるモ-ニングド-ブの言説がどのようなプロセスで形成され、中心的なイデオロギーと文化的交渉を遂げているかという問題を究明した発表内容を構想中である。
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