フランス・ルネサンス「文学」に於ける悪魔と魔女-その表象・役割・概念

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09710354
• 研究機関: 青山学院大学
• 研究代表者: 平野 隆文 青山学院大学, 文学部, 専任講師 (00286220)
• キーワード: フランス / ルネサンス / 文学 / 悪魔 / 魔女(狩り) / デモノロジー(悪魔学) / 表象 / イマジネ-ル

研究概要

研究期間の1年目に当たる本年度は、主に資料の渉猟と分析に力を注いだが、同時に、専門誌や紀要等にその成果を発表することができた。研究内容では、主に瓦版に於ける悪魔の表象について、今までの研究成果を学会誌に纏めて発表し、一応の区切りをつけた。又、個々の瓦版における悪魔や魔女に関し、神話学、物語論、宗教学、神学、書物史等の様々な角度からの分析および論考をものし、白水社の「ふらんす」にその成果を連載形式で発表している(連載は、平成11年3月まで続く予定)。
瓦版の悪魔像・魔女像の分析を上記の様に続けるかたわら、ルネサンス後期の悪魔学者や医者達の著作にもメスを入れることができた。その嚆矢として、当時のデモノローグ兼医者でもあったジャン・ヴァイヤーの『魔女論』を綿密に解読・分析し、当時の医学が、悪魔とメランコリーや、魔女に於ける身体と精神の問題を如何に把握していたのか、に焦点をあてて研究を進めた。又、往々にして、魔女狩りに反対した英雄として扱われがちなヴァイヤーの著作に、それ以外の側面、特に、彼の魔女論のもつ物語性をも浮き彫りにできたと自負している。以上のヴァイヤー論は、仏語による紀要論文として纏め、平成9年12月に発表することができた。
その他の著作家達に於ける悪魔の表象や役割については、現在、購入した資料をもとに分析を行っている最中である。尚、本研究の副産物として、イギリスの碩学マイケル・スクリーチの『ラブレ-』、フランスの歴史家ジョルジュ・ミノワの『未来の歴史』、その他2冊、計4冊の原書を翻訳する事になり、現在その作業も平行して行っている。(共訳)尚、これらの著作、特に上の2冊は、当研究課題と密接に結び付いている点を付記しておきたい。

研究成果

• [文献書誌] 平野隆文: "「カナ-ル」(瓦版)に於ける悪魔の表象(16世紀末〜17世紀初頭)-分類の試み:伝統的表象から断絶へ" フランス語フランス文学研究(日本フランス語フランス文学会). No71. 14-23 (1997)
• [文献書誌] 平野隆文(Takafumi HIRANO): "Jean Wier:precurseur des libres penseurs ?" 青山フランス文学論集. 第6号. 1-30 (1997)
• [文献書誌] 平野隆文: "悪魔のいるルネサンス《1》:悪魔は果たして殺人鬼か?" ふらんす(白水社). 7月号(72巻7号). 24-27 (1997)
• [文献書誌] 平野隆文: "悪魔のいるルネサンス《2》:私の中に悪魔が宿っている!" ふらんす(白水社). 8月号(72巻8号). 24-27 (1997)
• [文献書誌] 平野隆文: "悪魔のいるルネサンス《3》:お笑い芸人としての悪魔" ふらんす(白水社). 9月号(72巻9号). 24-27 (1997)
• [文献書誌] 平野隆文: "悪魔のいるルネサンス《4》:悪魔と寝た娘の話" ふらんす(白水社). 10号(72巻10号). 24-27 (1997)
• [文献書誌] 平野隆文: "悪魔のいるルネサンス《5》:悪魔か幽霊か,それが問題だ!" ふらんす(白水社). 11月号(72巻11号). 24-27 (1997)
• [文献書誌] 平野隆文: "悪魔のいるルネサンス《6》:悪魔は臭し,幽霊は芳し!" ふらんす(白水社). 12月号(72巻12号). 24-27 (1997)
• [文献書誌] 平野隆文: "悪魔のいるルネサンス《7》:洗脳の装置としての悪魔" ふらんす(白水社). 73巻1号. 24-27 (1998)
• [文献書誌] 平野隆文: "悪魔のいるルネサンス《8》:魔女も飛ばずば焼かれまい!?" ふらんす(白水社). 73巻2号. 24-27 (1998)
• [文献書誌] 平野隆文: "悪魔のいるルネサンス《9》:悪魔の頭も信心から?" ふらんす(白水社). 73巻3号. 24-27 (1998)