研究概要 |
補助金の使用開始から今日までの九ヶ月で得られた知見はまだそう多くはないが、本年度の研究目的である、東日本の研究機関所蔵の満州語文語会話書の調査を行った結果、以下の見通しを得た。1,会話書の文体マーカーとしての語気助詞の用法の特異性、2,満漢合璧体の文献における漢語の語気助詞との対応に見られる特徴、3,戯曲『西ソウ記』の満文訳本における台詞部分の文体が会話体に近いという予想の検証、4,『現代満語与漢語』(趙傑著,1993)の説く格助詞の用法・基本語順の変化が会話書の文体に見られるかどうか、などがこれからの考察の対象になると考えられる。 これまでは会話書のうち、『漢満字清文啓蒙』中の「兼漢満トウ話」の満州語と漢語をテキストファイルにデータベース化した。今後はさらにこれまで蒐集した文献をデータベース化することにより、会話書資料間の語彙頻度の比較などの作業を容易にすることを目指す。 なお、会話書資料と対照させるため中国古典の翻訳『満漢詩経』の新旧版のデータベース化も行っており、そこでも語気助詞の用法について会話書とは異なる、注目すべき現象があると思われるが、それ以外にも異なる版本の間には差異が見られ、これらは満州語文語自体の語法の史的特徴を明らかにする手がかりになると考える。
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