研究概要 |
本研究は「日本語音声聴取時において単語アクセント型が内部辞書検索に及ぼす影響」に関する定量的検討を主目的としているが,本年度(2年の研究期間の1年目)はその準備段階として以下に示す研究を行なった。 ・本研究を信頼性高く実現するためには,高品質なピッチ変換合成音声が不可欠である。その要請を満たすべく,分析合成システムPROSODY(平成8年度奨励研究(A)の成果)の改良とその評価を行なった。特に,1)有声部残差波形中のピッチパルスの高精度検出,2)部分的零位相化による品質劣化を抑えた残差波形編集,3)F_0変化に伴うケプストラム変動のモデル化と合成時のケプストラム変動のシミュレーション,について検討し,その有用性を示した。 ・また「F_0変化に伴うケプストラム変動のモデル化」は音声認識への応用も可能であるので,母音識別という範疇において本モデル化を実験的に検証し,その有効性を示した。 ・高品質化された刺激音声を用いて(筆者が行なった「1型アクセントの辞書検索における特殊性」に関する)先行研究の再実験を行なった。その結果,先行研究通り,1型の特殊性(語頭のアクセント核は辞書検索を早めるが,核が2音節目に来るとその効果は顕著に薄れる)を観測することができた。 ・更に,単語アクセントの音響的実体が顕著に異なる2言語(日本語/英語)間において,日本人が生成(発声)する英単語アクセントを分析し,韻律的特徴の3要素「声の高さ/長さ/強さ」の其々の観点から日本人による英単語アクセントを「評価」する手法を提案し,その妥当性を示した。本手法は「評価」に止まらず,「教示」をも生成できる能力を持っており,今後の研究テーマの一つである。 来年度は,これらの研究成果を生かし「内部辞書検索過程」への影響について定量的に検討する予定である。
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