ネットワーク上でのデジタル著作物の流通は、バーチャルモ-ル(仮想商店街)の発達ともに益々盛んになってきている。そこにおける特徴は、あらゆる人々が情報が発信者でもあり受信者でもあると言うことである。すなわち「一体一市場」が形成されているということである。しかしながらその際の著作権等の権利処理システムはいまだ従前の紙媒体での取引の制度をそのまま利用しているところがかなり多く見られる。 今回の研究において新たな必要性として見いだしたのは、コンシューマ(一般消費者)を中心とした権利処理への発想の転換である。すなわち従来の商業的な利用を中心とした著作物の利用を中心に考えるのではく、非商業的な利用を念頭においた権利処理や決済のあり方である。ここにおいて、従来はその料金徴収の対象から除外されていた「私的利用」の分野においても課金が必要ではなかろうかという一つの意見が導き出される。さらには、このような取引においては、マイクロペイメント(少額決済)が多用されるようになると思われるが、これを円滑に行うための新たな概念として「マイクロコンテンツ」とう概念の設立が必要ではないかとの意見も導き出された。 今後の研究課題としては、これらを円滑に行う際に不可欠となる、「電子透かし」等の技術について、その埋め込むべき情報の種類や、透かしの耐久性や品質、権利情報の追跡の方法や料金の徴収・配分の方法などを、法的政策的視座から分析・検討する必要があると思われる。
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