当研究は、2年間にわたり水法の総合的研究を企図するものであるが、とくに初年度はわが国の主要な水系・海域に実際に赴き、その管理体制について現地での資料収集・ヒヤリングを行うことに重点を置くこととした。調査対象の決定は複数の観点に依拠しているが、主要なものは、以下のとおりである。 ・人工的な河川とより自然状態に近い河川を比較するという観点から、北海道千歳川放水路および釧路湿原ないし釧路川 ・水源地域対策特別措置法に基づく指定ダムとして石狩川水系愛別ダム ・湖沼について、福島県内猪苗代湖・桧原湖・小野川湖・五色沼等。 ・多目的な河川管理施設として、奥利根地区に集中する八木沢ダム、奈良俣ダム、須田貝ダム、藤原ダム、玉原ダム ・港湾として、水質管理という観点から水俣湾および不知火海、海上交通という観点から関門海峡および門司港、また、環境破壊との関連で愛媛県織田が浜 公物法的観点からすると、予想以上に管理対象としての「水」環境の個性が際立っているという印象があり、国による一元的管理を前提としたうえでの治水・利水等にとどまらない「環境管理」的な発想に基づく管理内容の再検討もさることながら、管理権限の所在変更を含む管理主体としてふさわしい担い手は誰か、管理にあたりいかなる主体が利害関係を有する存在として関与することが制度合理性を有するのか、という観点からの検討が必要であるとの知見を得た。私見の理論的深化は次年度の課題となる。
|