研究概要 |
本研究は、当初2年にわたることを予定していたが、2年目の8月から筆者のドイツにおける在外研究が決定したため、研究計画については、実地研究を1年目に集中させ、2年目はこの成果を整理し、綜合するというデスクワークを中心として実施することとした。 まず、水法を総合的に検討するという見地から、昨年度の実地調査を補足する意味で、渇水対策およびリゾート建設についての資料収集を行った。また、この研究期間中である平成9年度に河川法の改正がなされ、同法が従来の治水・利水だけでなく、より総合的見地に立った水管理をも射程にいれるようになったほか、河川整備計画の作成段階において地域の意見を反映させるといった制度改変が行われたことは、河川管理という特定領域においてではあるが、従来型の公物管理体制では処理しきれない諸問題が噴出していることを示しており計画済みの全国におけるダム建設の中止が現実に打ち出されたことは、最早制度疲労が糊塗し得ないところまで進んでいることの証左である。筆者は、このような制度改変が河川法のみならず、水資源開発促進法、水資源開発公団法、特定多目的ダム法,公有水面埋立法、運河法のみならず、港湾法、漁港法、水道法、下水道法、さらには水質保持に関する諸法律においても必要であり、かつ、これら水関連法律の再編成を行わなければならないと考えるものである。現時点においては、「環境ホルモン」をめぐる極めて深刻な新たな問題も生じており、水管理の方針自体が根本的な見直しを迫られるであろうことが予想されるが、行政法的観点からすると、とくに、地方分権、省庁再編、規制緩和の動向を踏まえて、その受け皿ないし担当機関として、いかなる「水管理体制」を構築ずるかが早急の課題となると考える。
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