わが国の信託税制を立法論的に研究する本研究の中で、平成9年度は、主として、投資信託等の集団的信託の課税関係について検討を行なった。 具体的には、まず、現行制度における投資信託を、合同運用信託(貸付信託を含む)、公社債投資信託、その他の一般投資信託、および、特定株式投資信託に分けて、その課税関係を詳細に検討した。その際に用いたのは、投資信託課税においてどのような「導管性」が認められるか、という分析の視角である。すなわち、投資体と投資家の「二重課税」の有無のみを考えるのではなく、それが「二重課税排除」「投資体が稼得した所得の所得分類等の投資家への伝達」「投資体の損失の伝達」等の様々な「導管性」の中でどのような位置づけがなされるのかを検討した。 その上で、今後のわが国の金融法制の緩和の流れの中で、証券投資信託税制がどのような内容を持つべきかについて考察した。その結論としては、(1)証券投資信託はその信託財産の内容(投資内容)とは切断して、投資所得としての所得類型を与えられるべきであり、また、(2)投資体においては、比較的短期の損益計算期間毎に所得のほぼ全額を投資家に払いだすタイプの投資信託においては、法人課税の対象としないことが理論的にも正当化されるということ。および、(3)特に個人投資家において投資損失を所得計算に反映させる、合理的に限定された手法が必要であり、当面は投資所得内での通算が現実的な解決策として考えられるということである。 さらに、いわゆる日本版SPCが立法される見通しであることに伴い、その内容は「受動性」という観点から規制されるのではなく、特別措置として立法の必要性から決定されるべきであるとの結論を得た。 以上二点に関する論文は平成10年度上半期中に出版される見込みである。
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