本研究の目的は、集合財産担保という包括的担保手段によって生じる一般債権者や競合担保権者との間の、とりわけ集合財産担保による債務者財産の過剰把握をめぐる利害の対立をどのように解決すべきかを検討しようとするところにある。そのためにまず、本年度は、ドイツにおいて動産担保による債務者財産の過剰把握の問題をどのように解決しようとしたのかという法政策的観点からの検討とともに、競合担保権者との関係において従来の判例法理ではどのような解決が与えられてきたのかを検討することを予定していた。 前者の課題については、ドイツ倒産法の立法過程を検討しているが、なお、問題点の整理にとどまっている。他方、後者の課題については、まず、競合担保権を法定質権、とりわけ使用賃貸借質権に焦点を絞った。そのうえで、その法規定の構造、判例法理および学説を順次検討した。その結果、原則としては、この質権の効力の及ぶ範囲は使用賃借人の所有物であるか否かで決定されていることが確認できた。しかし、搬入された動産についてこの質権と集合動産譲渡担保とが競合する場合においては、判例と学説が対立する。ドイツの判例はこの質権が優先すると解しているが、学説はそれに反対していることが明らかとなった。この背景には、この質権よりも集合動産譲渡担保こそが経済的に重要な与信担保手段となっていることがあるとされている。 以上の検討を踏まえて、来年度は、より厳密に集合動産譲渡担保権者と使用賃貸人質権者の利害状況について検討を加えたいと考えている。そのうえで、より一般的に集合財産担保権者と競合担保権者との優劣を判断する要素が何であるのかについて、検討を加える予定である。
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