1.「研究の目的」示した「『クレジット・カード法』立法のための前提資料」の提供、および「クレジット・カード法」のあり方の提言のため、今年度は、第1に、研究計画に示したとおり、わが国におけるクレジット・カード実務の法的問題点を、約款および(下級審)判例から抽出・検討する作業を行った。約款には、クレジット会社が不当に有利であると考えられる条項が散在し、また適用範囲が曖昧だと考えられる条項も存在する。これらの点が、約款上の法的問題点として指摘できる。他方、判例では、訴訟まで持ち込まれるのは、不正使用の事例が多く、おおむね判例の判断は妥当な判断であると指摘できる。 2.今年度の作業の第2として、ドイツのクレジット・カード関連法の検討を行った。ドイツには、クレジット・カード固有の法律が存在せず、他の法律が規制している点でわが国との共通性があり、この観点からの検討を重要課題とした。検討は、学説(著書・雑誌論文)および判例を通じて行った。この検討から明かとなったのは、ドイツではクレジット・カードについては、「約款規制法」という包括的規制法により、その取引約款が「約款規制法」により規制されることにより、妥当な解決を導いているということである。したがって、わが国で現在検討されている「消費者契約法(仮称)」が成立すれば、かなり近い法のあり方となると考えられる。ただし、一部にアメリカ法を参照した日本法の考え方の方がドイツ法より消費者保護に厚いとみられる部分もある。 3.ドイツ法を検討した結果、わが国で従来あまり議論されてはいないが、今後、取扱いが急増するとみられるサインレス・カードおよびlD取引についての考え方に興味をもった。来年度は、このような従来わが国で議論の少なかった分野も含めて、包括的にドイツのクレジット・カード法を検討し、研究目的を達したいと考える。
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