ハイリスクを伴う投資商品の勧誘に際し投資勧誘者に課せられる投資家保護義務について研究を行った。ドイツの法状況の分析を通してわが国における問題解決のための指針を提示することが最終目標であるが、平成9年度は、ドイツの判例や立法の動きを分析し、以下の5項目を解明した。 1.助言義務と説明義務との違い、ならびに、助言義務の範囲を確定するための判例準則である「投資家に適した助言」ルールについて。 2.1993年の証券業務に関するEC指令11条が、その後に制定された証券取引法の行為規則に与えた影響について。 3.証券取引法31条2項に規定された証券会社の「顧客に関する情報を収集する義務」と「情報提供義務」の内容、ならびに、両義務の関係。特に、証券会社の調査義務を明文化したことの意義とそれが民事責任(とりわけ不法行為責任)の成否に及ぼす影響について。 4.証券取引法35条に基づいてドイツ連邦監督庁が1997年に作成した「証券会社の行為義務に関するガイドライン」の内容、ならびに、それが証券取引法の解釈や実務に与えた影響について。 5.デリバティブ取引において取引所法53条2項が先物取引業者に課した情報提供義務と証券取引法31条2項における情報提供義務との関係。特に、二段階の情報提供義務を課すことの是非ならびに効果について。 平成10年度は、平成9年度の研究成果を公表するとともに、適合性原則と説明義務との関係、ならびに、投資商品購入資金を融資した金融機関の責任などについて分析を試み、わが国の法状況との比較を行う予定である。
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