本年度は、英国・米国・ドイツ等の諸外国の判例および学説を整理するという基礎的作業を中心に研究を行った。そのため、まず、本学法学部図書館や(財)生命保険文化研究所付属図書館等に所蔵されている書籍・雑誌・判例集から必要文献を収集したほか、海外において公刊されわが国の図書館にはまだ収められていない最新の著作についてもインターネットを通じて検索し収集した。 次にこれらの文献を読み進めて、諸外国における判例・学説を要約・整理するという作業を行った。その結果、保険会社から保険募集のために雇用されまたは保険募集を委託されている保険募集人と、保険会社から独立して活動する保険仲立人とでは、保険募集に際しての説明義務の根拠が同じではなく、後者においては保険仲立人と顧客の委任契約に基づいて契約上の説明義務・助言義務が生ずると解されているのに対し、前者においてはせいぜい保険募集人と顧客のおかれている状況から信義則上説明義務が生ずることがありうるにとどまるということが明らかとなった。また、虚偽または不十分な説明があったために顧客が不利益を被った場合の顧客の救済方法も両者においては同じではなく、保険仲立人の場合には、義務違反による損害賠償責任が保険仲立人に生ずるに止まるのに対して、保険募集人の場合には、損害賠償に加えて、誤った説明の通りの保険契約の成立を認めてこれに基づく保険金の支払をなさしめるという救済もありうることが明らかとなった。 次年度は、以上の研究を基礎として、わが国における解釈論を検討することを予定している。
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