平成8年度文部省科学研究費補助金奨励研究(A)では、「野村証券事件」・「ハザマ事件」等、企業不祥事件を端緒として、取締役の経営責任について考察を加えた。本研究は、これをさらに展開させようとするものである。したがって、本研究は実情を意識し現状に即応した研究として位置づけられるが、近年の事例の多さから、分析・考察よりもまずは収集・整理作業に負われることになった。 研究は、まず資格等の収集を行った。図書購入のほか、所属機関、関東学園大学(併設校)および中央大学図書館等の施設利用により論文および判例といった資料を閲覧・謄写した。 また、所属機関および自宅設置のコンピュータ端末機による資料等の収集も行った.この際、汎用性・拡張性の点からosとしてWindows95が望ましいため、lBM社製(Aptiva)に買い換えた。同機器の利用により、判例CD・ROMから迅速・容易に判例を検索できるなど有効であった。ただし、これらの図書資料・事例の整理・分類・分析は、当初の計画よりも遅れ、平成10年度の作業となる。 さらに、株主代表訴訟手数料引下げ(平成5年商法改正)から4年余りが経過していること、近年の企業不祥事件多発とこれに関する監督機能および取締役の責任増加に対する問題意識から、アンケート調査を実施した。対象企業は東京証券取引所1・2部上場全企業(約1800社)であり、株主代表訴訟、取締役・監査役の監督機能、取締役の経営責任および株主総会運営等を質問事項とした(詳細は、別紙添付アンケート書類を参照)。なお、実施期間は平成10年3月9日〜31日であるため、同調査結果に禍する整理・分析等については、平成10年度の作業となる。 以上、総じて、計画が遅れ気味となった点は猛省するものであるが、アンケート調査については、その対象規模も大きい点などから価値あるデータが収集できるものと考える。
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