本研究は、コンピュータ・ネットワークが拡大し続ける中での性表現の刑事規制のあり方を、アメリカの規制の実務や理論状況を手がかりに検討しようとするものであった。本年度は、昨年に引き続き、歴史的・比較法的研究を深めるとともに(「性表現の刑事規制ーアメリカ合衆国の規制の歴史的考察」の連載継続)、チャイルド・ポルノグラフィの規制やフェミニズムからの規制論、未成年者の保護のための規制などに関する内外の文献を収集・分析に努めた。それとともに刑事規制を考える際に重要な証拠法や公的弁護のあり方、さらには未成年者の保護に関わる少年法改正問題についても研究を進め、証拠法については共同研究の成果の一部として『ドイツ証拠法』の翻訳を、公的弁護についてはアメリカの状況についての紹介を行い、少年法改正問題については意見書(浅田和茂・高田昭正・三島聡「要綱骨子事務局試案等に対する意見」 〔1998年12月10日〕)を作成し法制審議会少年法部会に提出した。また、わいせつの定義やわいせつ性の認識を検討するうえで重要な、刑法理論と事実認定との関係をどのように捉えるかという問題につき現在論文の執筆中である。 本年度は性表現規制の資料の分析とこれら周辺領域の研究に力を注いだため、性表現規制そのものについて成果を十分公表するには至らなかったが、来年度はこの2年間の研究をもとに精力的に発表していく予定である。
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