1本年度は、当初の予定通り、町人思想よりも知識人の経世論の力点を置いて史料収集を行った。本研究の目的は、市場社会論と国家体制論(集権化・分権化)の双方にかかわる議論の抽出と整理にあるが、専売制度の可否をめぐって盛んに論争が行われた仙台藩のケースが本研究を進める上で有効な素材であることを発見した。そこで、活字化されている史料を整理すると同時に、宮城県立図書館に所蔵されているマイクロ史料を閲覧、複写した。しかし、判読困難な史料が大半だるため、整理は次年度に持ち越された。 2町人思想の関連では、神道関係の重要史料を神宮文庫で閲覧した。当初の予定では、これまで集めた教訓書などの史料をデーター入力し、重要概念の抽出を行う予定であった。しかし、入力作業に先立ち、判読・選別作業が必要であり、データー入力には未だ至っていない。 3これまでに入手した史料の整理にかかる時間等に鑑み、研究計画の一部を修正する必要があると考えるに至った。当初計画では、経世論と町人思想の二本の柱を掲げていたが、前者を中心に考え、町人思想はこれを補完する形で利用することにする。また対象も仙台藩に限定し、林子平、桜田進、蘆野東山を中心に、その周辺の思想を調査することで、議論の類型化が可能であると考えるに至った。そこで次年度は、上記1で入手した史料の整理を第一に据えて研究を続行する予定である。
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