本年度の研究は、以下の三テーマに渡って行われた。 第一に、1950年代の日本における官僚制の変容を、かつての内務省が所掌する内務行政と、経済政策とに分けて見取り図を描くことである。こういった類型は、イギリスの中央地方関係研究から示唆を得たものであるが、内務行政における知事の役割と、経済行政における大臣官房の役割に着目して、The Bureaucratic System in the 1950'sにまとめた。これにより、1960年代以後の展望を得ることができた。 第二に、1960年代の高度成長期における官僚制の変容を国際比較の枠組みにおくための準備作業として、この時期の日本とドイツの行政改革を比較し、そこにおける計画・調製概念の位置付けを検討した。両国の類似性は、第二次世界大戦以前に制定された文書管理規則と省庁の組織の規格化に求められ、それを前提として計画・調製の両概念が形成されている。このアメリカとは大きく異なる特徴を提示し得たことにより、アメリカ行政学を相対化した上で、日・欧・米を比較する枠組みを構築する展望が得られた。 第三に、1980年代の日本の省庁編成を検討するために、この時期から顕著となった「審議会政治」に分析を加えた。ここで採用した社会運動と外圧という枠組みは、それ以前の時代にも適用可能であると考えている。よって、来年度はこれを修正しつつ、理論面での国際比較を加味しながら、以前の時代との接合を図っていく予定である。
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