キューバ共産党機関紙『グランマ』における主な政治指導者の発言及びそれに関連する政治行動を調査・分析し、中央及び地方、大衆組織等のリーダー達の政治行動原理を、特に思想的基礎を明らかにすることで解明しようとした。 研究成果の一部として、試論ではあるが平成10年6月開催の日本ラテンアメリカ学会(於、神戸大学)にて「キューバ ナショナリズムの変容」と題して研究報告した。この中で、特に強調したのは、近年におけるキューバ政治指導者たちのホセ・マルティ思想の新しい解釈、チェ・ゲバラ的な理想主義への回帰、キリスト教、特にカトリック教会との和解等に関する言及が増えていること、その背景に、現在推し進めている政治、経済、外交面での政策的再編の正当化や、地方組織、地方指導者への一定の権限委譲や大衆組織の活性化といった目的がある点を指摘したいということである。 こうした流れは、中長期的にみればキューバ民主化を一段と促進する方向に働くことは疑いなく、その点を含め、平成11年度中に研究の全体的とりまとめを行う。
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