本研究はアックスコンペティション(相税競争)を政治的に分析することを目的としている。具体的には計量分析と事例研究の2段階から構成される実証的比較分析の手法を取っているが、今年度は第2段階の事例研究を行った。 「『退出(EXIT)』『抗議(VOICE)』モデルの理論的考察(昨年度論文として発表)」をベースに、経済の国際化の国内政策プロセスへの影響をメカニズムを、1980年代の先進国の税制改革を通じて解明することが、今年度の目標であった。特に、なぜ同一の方向性をもった改革が行われたかが中心的課題であり、説明要因として、 (1)国内アフターの利益の変化、利益集団の動向-(利益集団(VOICE)モデルの妥当性) (2)政策当局者による認知(資本逃避、競争力低下への概念)-(国外逃避(EXIT)モデルの妥当性)の検討に焦点を置いた。 研究の対象としたのは、アメリカ、カナダ、日本、ドイツである。(1)各国の税制改革プロセスについての先行研究を把握する、(2)新聞等により研究の指標とする年表と作成する、(3)聞きとり調査(政府、業界団体等)の順序で研究を進めた。 これらの成果は、5月の国際政治学会、6月の公共選択学会において中間発表を行い、幅広い学問領域からの有益なコメントを得た。現在は最終的とりまとめを行うと同時に、ドイツにおいて現在進行中の改革についても研究成果に含めるべく、追加作業を行っているところである。
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