今年度における研究成果の概要は以下の通りである。 (1)本研究の基本となる一般均衡モデルを設定した。公共プロジェクトの実行に必要な生産財の財源を間接税で調達した場合と一括税で調達した場合との比較によって、課税による効率性損失が定式化される点に特徴がある。 (2)資源利用係数および消費者余剰係数を用いた租税政策の評価分析を行った。この分析において、消費者の厚生損失が、資源総量の貨幣評価価値を考慮することによって、等価変分と補償変分に関連付けて表現できることが明らかになった。あわせて、消費者余剰を尺度として用いた従来の分析との差異が判明した。本研究では、評価に用いる仮説的な価格ベクトルを用いることが特徴であるが、このベクトルの性質を考慮することによって、資源利用係数と消費者余剰係数との評価値の関係が分析された。特に、消費者の選好が同一で相似同型の場合、両者の評価値が一致することが判明した。 (3)税率を変更した場合の、限界的な損失の変化が測定された。この結果を踏まえた最適課税の分析では、とくに生産技術が線形である場合には、従来の最適課税理論に対応した結論が得られることが判明した。生産技術が非線型である場合には、複雑な経済学的意味をもつ結論となったが、さらに詳細な分析を来年度の研究において展開していく予定である。 なお、これらの成果を踏まえた論文、「効率性損失の尺度と租税政策の評価-投入と産出の側面から-」を現在作成中である。
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