本研究の目的は、規模の経済性が存在する場合に、貨幣経済における経済成長がどのような修正を受けるかを、近年盛んに研究が行われている内生的経済成長モデルの枠組みにおいて理論的・実証的分析に考察することにある。これまでの研究でも、貨幣が存在しない経済成長モデルにおいて資本に関する規模の経済性の存在を取り扱った研究は数多く行われている。しかし、本年度の研究では、特に労働に関する規模の経済性が存在する貨幣経済モデルに注目し、労働に関する規模の経済性が貨幣経済の動学的性質を大きく変化させ、経済変動がファンダメンタルズ以外の要因によって決定される「サン・スポット均衡」などの不決定の問題をより生み出しやすくすることを明らかにした。本研究ではまた、これら貨幣経済モデルに固有の不決定性の問題によって、これまでマクロ経済学では十分に説明できなかった経済変動や経済成長、それに国際間の資本移動が、人々の心理的な変化によって引き起こされるメカニズムを理論的に明らかにした。なお、研究に際しては、京都大学経済研究所や米国エール大学など国内外の各大学の研究者と活発に意見交換を行ったが、これらは論文の最終的な完成にむけて大いに役立った。また、平成9年度に得られた結果をまとめる意味で、平成9年12月にはオーストラリアのシドニーで開催された学会でその成果の一部を発表すると同時に平成10年3月15日と16日には関連した研究を行っている研究者を集めてコンファレンスを東京大学山上会館で行った。
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