本年度は、輸送費用が経済立地、更には、国際・地域経済の空間構造に及ぼす影響を、生産または消費外部性に起因する集積の経済、および、輸送密度の経済が存在する下で次のように分析した。 1)輸送密度の経済が存在せず、集積の経済のみが働く状況を想定して、連続地域空間において、集積の経済と輸送費のバランスにより、都市の規模、位置、産業構造など、地域経済の空間構造が決まるメカニズムを明らかにした。また、開発された理論モデルを用い、数値シミュレーションによって、都市システムの階層的構造や工業ベルト地帯の形成などを説明した。 2)1)モデル外生的に輸送ノードを導入することにより、輸送ノードで発生するハブ効果と集積の経済の相互作用についても分析した。 3)輸送密度の経済を導入し、2)で考慮した輸送ノードの形成を内生的にモデル化し、ハブ効果と産業立地の相互作用の分析を行った。とくに、生産・消費の外部性による集積の経済が存在せず、輸送密度の経済のみが働く状況を想定して、離散地域空間において、地理的要因、生産技術、要素賦存が同一な地域群のある地域に輸送ハブが形成され、産業集積が起こり得ることを示した。また、輸送密度の経済の下では、輸送経路は集約化され、物流・人流が特定の経路に集中する傾向にあるため、画一的な輸送網の高度化より、特定の輸送経路を集中的に高度化(とくに輸送ハブ形成など)する方が効率的であることが示された。
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