高次の複雑系としての経済を考えるために、ここ数年、不可逆的な時間のなかで、ローカルな情報をもとに自らの調整行動を実行する経済主体からなる開放システムモデルの構築作業を続けてきたが、平成9年度中には、そうした仕事の集大成として『ケインズ-歴史的時間から複雑系へ』(日本経済評論社)を出版。さらに複雑系経済学のいっそうの具体化のために、高次複雑系経済学の条件、定型的行動を考える際の基準が組織内部より自己組織されるメカニズムを示したモデルを構築。その成果はNOLTA'97(11/29-12/2)で報告(M4Aセッション、タイトルParallel Processing Economic System Composed of Non-optimizing Agentsとしてプロシ-ディングスに収録)された。その後いくつかのモデルのバ-ジョンアップと研究会報告(岐阜経大シンポジウム、経済理論史研、ケインズ研ほか)を経て、現在も、不可逆的時間・ルーズな結合・自律分散システム・満足化原理による主体行動を特徴とした並列処理経済系モデルの具体化作業を次年度に向けて継続中。とくに情報処理バッファとしての貨幣・在庫の評価方法を検討している。
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