持続可能な発展の指標は、環境資源に含む広い意味での資本ストックの時間変化(期首と期末の差)をそれぞれの資本に対してウエイト付けし、集計したものの符号によって与えられる。ウエイトは資本を変数とする評価関数(最大化された社会厚生関数)の支持価格であり、評価関数が凹である限り、この指標は各期間が局所的に持続可能であったか否かを判定できる必要条件と十分条件を(形式上)与える。離散時間モデルの枠組みで、この非常に一般的な結果を導出した。一方で、ウエイトあるいはその根底にある評価関数の決定や評価は、理論的に導出されるというよりも、むしろ現在世代の社会的合意によって行われるものであるという結論に至った。研究を通じて明らかになった興味深い問題は、持続可能性という社会のゴールを満たす資本経路は、標準的な最適成長モデルから得られる最適経路と必ずしも一致しないことである。80年代半ばからの経済動学モデル(環境資源を取り入れたモデルを含む)の研究で、周期解やもっと複雑な解経路が最適経路で生じることが知られている。そこで、ー状態変数のモデルで(持続可能性を満たす)単調な経路の特徴づけと評価を考察した。ー意の正定常解をもつ単峰型のpolicy functionで最適経路が示されるモデルで、このような単調な経路を選ぶことは、1)有限期間で定常解に至る(これは計画をする立場からは、便利な結果である)、しかし、2)定常解に至った段階でtime inconsistencyが発生することがわかった。よりsuboptimalだが、経路をtime consistentに保つ方法は、policy functionの領域をさらに制限することである。このような「持続可能な」経路がどれほど社会厚生の損失をもたらすか、いくつかの数値例で計算を行っているところである。現在得られている結果では、最大で0.3%程度というものである。
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