まず、主としてアジア各国について、環境および環境に関わる経済活動のデータを収集した。その作業を試行的に行った結果、環境統計の多様性は研究開始時に想定していたものをはるかに上回り、体系的な方針なしにデータ収集を行っただけでは極めて利用度の低いデータしか収集できないことが明らかになった。いいかえれば、効率的なデータ収集を行うためには、先に環境統計の体系性を確立しなければならないことが明らかになった。まず本年度は、環境行政に関わる行政統計という観点と、物質やエネルギーの循環という観点から体系化して環境統計の収集を行った。行政統計としては、大気・水・土壌の環境メディアの測定データと、紛争処理に関わるデータがあり、物質循環のデータとしては生産過程では多様な産業統計があるが廃棄過程に関する統計は全く不備であることが明らかになった。さらに、データの効率的な公開方法について検討し、収集したデータを公開するためのインターネットを利用したデータベースの開発を行った。 なお、収集したデータの一部を利用して、日本環境会議編『アジア環境白書』の水環境に関わる部分を執筆した。ここで明らかにしたことは、アジア地域においては水需要の大部分は農業部門で使用されていること。今後の農業生産増大要求のため、水需要が増加していくと予想されること。しかし水資源開発は頭打ちになりつつあること。農業での農薬や肥料多投による汚染とともに、工業開発は進展することにより、人工化学物質による水源汚染が進みつつあること、等を明らかにした。
|